雨のカフェ

大津祭りファン倶楽部
     次第に強くなった雨

今日は雨ですね。あの日も雨が降っていました。昨年の夏のことです。
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夏。

小雨にぬれながら、私は開店直後のあのカフェに飛び込んだ。客はいない。静かだ。

「いらっしゃいませ」「モーニングで」。注文したものが届いた。持ってきたのは見知らぬ女性だ。きっと娘さんだろう。「お母様は?」「母は病気で倒れたんです。なので、私がお手伝いしてます」「大丈夫なの?」「お呼びしましょうか」「ママ、ママ~」

 

雨が次第に強くなった。バラバラバラ。

厨房から手を拭きながら、母親は姿を現した。「エツ」。私はその風貌に驚いた。やせ細った身体。頭に白いものが増え、顔も・・・。「奥で声が聞こえました。でも出ようかどうか迷ったの」

私は闘病のすさまじさを感じた。私はお店に出られるほどに、回復できて良かったですね、と伝えた。「娘さんが側にいて助かりますね」「これからは、幸せをかぞえて生きましょうよ」。そんな話をしたと思う。

 

ますます雨は激しくなった。ザーザーザー。

これじゃ台風みたいだ。窓辺の植物が、小刻みに頭を振る。もう、向こうが見えない。

 

ザーザーザー。雨はしばらく続いた。最後のコーヒーを飲み終えたころ、お客さんが来た。ご夫婦だろうか。注文した後お互いが携帯電話に夢中だ。「いらっしゃいませ」。また、次のお客さんが来た。

 

雨が小ぶりになってきた。さあ、出発しよう。この雨が終われば、もっと涼しくなるだろう。秋はもうそこまで来ている。