「芸大の卒業展に行った」

  大学の大階段と卒展案内状
  大学の大階段と卒展案内状

良く立ち寄るCaféで「2016年度 京都造形芸術大学 卒業展/大学院 修了展」の案内を頂いた。そして開催期間中のある日、私は大学の展示会場にいた。少し曇り模様で小雨が降る気配だ。

 

その日は訪問前から美術工芸学科・日本画コースと情報デザイン学科・イラストレーションコースの作品を鑑賞する予定だった。ところがキャンパスが広大なため目的場所がすぐに特定できない。案内嬢に聞き人間館C棟5-6Fの日本画コースへ向かった。

 

印象深い作品のひとつがサンショウウオをモチーフにした絵だ。障子を使い日本間を再現した空間に、渦巻模様に図案化された独特の水流や、金箔を使った装飾的な大画面の屏風絵が並ぶ。「ああ、江戸時代の日本画絵師・光琳だ」。ふとそんなイメージが浮かんだ。

 

また、文化財保存修復領域のコーナーでは、日本の絵画形式の1つである絵巻物の模写の様子が説明され、実際に美人画などを再現した作品があり、その緻密な表現に驚く。固有の素材や独自の技法を、長きにわたってその絵画様式を保持し継承するには欠かせない技術だ。

 

いずれも学生作家さんのお名前をメモしていなかったので残念だ。

 

さて、建物を出ると小雨が降っていて、時間もだいぶ経過していた。私には傘がない。でも、このままでは帰れない。智勇館に行かねば。Cafe「Verdi」で一休みしたい気持ちを抑え、急いで白川通りを歩いた。

 

情報デザイン学科の会場では、3つの作品が強く印象に残った。

 

ひとつは「underground」(伊原菜摘)だ。B1サイズのポスター5枚には、食生活、動物、都市生活、戦争、労働などの光景を合成していて、そのままでも楽しめるグラフィックだが、作者の意図は別にある。考えさせられる作品だ。

 

二つ目は「Flower Children」(井上朝香)だ。B2サイズのパネル3枚には、食卓を想わせる光景に小さなマスコットキャラクターが登場し、ほっこりした雰囲気満載の絵だ。「遊び心を失わないで」と作者は呼びかける。

 

三つ目は「判じ絵看板」(岩切胡都)だ。判じ絵は江戸時代に大人から子どもまで広く庶民に流行した知的娯楽の「絵で見るなぞなぞ」。これを現代風に表現して看板にした。例えば「温泉マークの上でクロの文字がゆらぐ」看板。答えはユニクロ。なるほど。思わずニヤリと笑う。

 

たくさんの作品に触れ幸せな気持ちになった私。みなさんありがとう。

 

*印象に残った3作品は「私の1枚」のコーナーで紹介しました。