祭りの日は法被が良くにあう

     町内を練り歩く左義長
     町内を練り歩く左義長

3月12日(日)の午後、私はJR近江八幡駅で電車から下車した。天気は晴れ。湖国に春を告げる「左義長まつり」(国選択無形民俗文化財)見学が狙いだ。駅舎にある観光案内所でパンフレットを頂戴しバス停に向かった。「間もなく出発します。お急ぎください」。臨時バス近くで案内人が声をあげた。

 

市営木幡駐車場で下車し日牟禮八幡宮へ歩く。白雲館あたりの路上は観光客でいっぱい。すでに子供左義長が、両方からぶつかり合いの最中だった。周辺にカメラを向けた奥様たちが声援をあげている。参和会(藍色の法被)と紫竹会(靑の法被)のお子様の応援だろう。まるで運動会の光景だ。

 

昨日から始まっている祭りだが、私には素朴な疑問があった。左義長をぶつけ合う「組み合わせ」の勝敗と、なぜぶつけ合うのか、というものだ。

 

八幡宮前の広場には、えとの飾り物を付けた左義長が数基到着していた。周囲は多くの見物客で賑わっている。目の前で紫竹会(青の法被)と本町(赤の法被)のぶつかり合いが始まった。中央付近では両者の先導役が、ホイッスルやかけ声で仲間を煽る。後方から前に向かって「押せ、押せ」の体制だ。

 

突然、片方が左に傾いた。相手は勢いが増す。もう上側に乗っかかっているよう。しかし、下側も負けてはいない。次第に回りながら体勢を盛り返してきた。ついに起き上がった。声、声、声。汗、汗、汗。ダシや赤紙が激しく揺れる。派手な化粧姿の若者らの法被が揺れる。まるで棒倒しの様相だ。格闘技だ。

 

本町(赤の法被)の長老に先の疑問点を聞いた。

 

「勝ち負けはないね。どちらかと言えば損傷(ダメージ)の大小かな」。話によれば13基の全てとやるでもなく、組み合わせの決まりはない。その場で試合(?)申し込む。場合によっては断っても良いという。

 

昔、町内を練り歩いていた左義長が、向かい合う形になった。狭い道だ。両者ともプライドがあり道を譲らない。「どちらが道を譲るのか」。そこで左義長をぶつけ合って負けた者が道を譲ったという次第。「う~ん。そんな背景があったのか」。そして、今では八幡宮前の広場で観光客相手のショーの感じになってしまったようだ。

 

八幡宮近くの和菓子店「CLUB HARIE」では、臨時屋台もあり客の長い行列ができている。広場は法被姿で走り回る子供や、老若男女で混み合っている。祭りの日は法被が良くにあう、私はそう思った。

 

頭上を見上げると青空に飛行機雲が白く弧を描いていた。素敵な春の1日。

 

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コメント: 1
  • #1

    杉山稔 (木曜日, 16 3月 2017 10:58)

    ここにも、『祭人』が1人!
    嬉しい事です!
    喜びや楽しみを共存出来る幸せに感謝!
    近江八幡は、八幡祭礼に向けて動き出しています。
    私の地元も、『船木祭礼』を皮切りに、週末は八幡堀に一年間沈められ保管されていた『大松明の心棒』を引き上げる作業に入ります!
    又、二日酔いのシーズン到来です!(^_^;)
    ホームページの更新、楽しみにしております!
    (⌒‐⌒)�